魔法の粉?〜重曹の性質

重曹について質問があります。

重曹というのは昔から、ふくらし粉、除臭剤、研磨剤、汚れ落としなどに使われていますが、どういう仕組みでこれらの効果が出るのですか? 汚れ落としに関しては、基本は石鹸と同じで、アルカリで油や汚れを分解するものなのでしょうか?除臭効果・ふくらし効果などはどうして生まれるのですか?研磨効果にしても、あんなにすぐに溶けてしまうのに、どうしてクレンザーに匹敵するくらいの研磨効果があるのか不思議です。どんなにこすっても落ちない鍋のこびりつきも、煮立てて一晩置いておくと、勝手に剥がれ落ちてくるのは何故ですか?

というのも、普段私は純石鹸で髪を洗っているのですが、ある日思い立って、重曹水溶液で頭を洗ってみたのです。すると、純石鹸で洗ったときよりスッキリ快適で、匂いも痒みもなく、クセになりそうな洗いあがりではありませんか。純石鹸で洗った時は、翌日の夜はベタつくことがあったのに、重曹で洗った日は、2日めでもベタつきません。

重曹で頭を洗うのは快適なのですが、どういう仕組みで汚れが落ちるのかわからないので、使い続けることによって髪の毛が痛むことはないかが心配です。重曹温泉は、肌に良いと言われているし、入浴剤としてお風呂に重曹を入れたりするので、髪に悪いはずはない、と勝手に思っているのですが、あまりポピュラーな使い方ではないので、やはり問題があるのか心配です。

頭を洗う問題だけではなく、私にとってなくてはならないオールマイティな魔法の粉「重曹」について、化学的に教えていただければありがたいです。よろしくお願いします。

ご回答

■重曹の用途と化学的性質について■
重曹(NaHCO3、炭酸水素ナトリウム)は、ナトリウム化合物中で最も弱いアルカリであり、最も多くの炭酸根を持っております。これがどのようにご指摘の効果につながるかといいますと、脱臭は、酸-アルカリの中和による脱臭ですので、酸性の臭いのみ脱臭します。冷蔵庫、排水口、生ごみ、下駄箱等でご使用いただくと効果がわかると思います。

膨らし粉は、加熱した時の分解によって、炭酸ガスを発生します。この炭酸ガスを生地が取り込むことにより膨らみます。ホットケーキ等で気泡が出るので分かるかと思います。

反応式:2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2+ H2O

研磨効果に関しては、粒子の硬度が新モース硬度で2.5程度ですので、汚れは落としても、モース硬度の高いステンレスや鉄といった材料などは傷はつけないという特徴があります。ただし、アルミや銅などの柔らかい金属は傷がつきますので注意してご使用ください。

鍋のこびりつき(焦付き)については、使い方として、お鍋に水を張り、重曹を入れて一煮立ちさせ、一晩おくと思うのですが、温度を上げることで上記反応式の反応が起こり、アルカリが強くなります(重曹のpH:8程度、Na2CO3のpH:11程度)。そのため、調理したものの油脂成分と一部鹸化反応が起こり、液の表面張力を低下させて焦付きと鍋の隙間に水が入りやすくなり、また焦げの繊維質を柔らかくしたりすることで取れやすくなります。

通常の汚れ落しの場合は、重曹は水に溶けるとNa+とHCO3- に解離します。HCO3-イオンが+(プラス)に帯電している汚れに付着し、汚れのついている側も-(マイナス)に帯電させ、汚れを引き離します。

煮豆に使用すると早く柔らかくなるのは、お豆のタンパク質を溶解させ、水を吸いやすくします。また、アルカリの作用で繊維を軟化させます。

銀のお手入れに重曹を使うと、くすみがきれいに取れます。銀のくすみは、銀表面が空気中にわずかに存在する硫化水素(H2S)と反応して硫化銀(Ag2S)になったものです。これをとるためにアルミ箔を敷いた容器の中に重曹とお湯(沸騰直前の)を入れ、その中に銀(Ag)製品を浸けます。なぜアルミ(Al)箔を使うかといいますと、AlとAgは起電力の差が大きく、重曹は電解質ですので、一種の電池を形成します。ここで電子がAlからAg2Sへ移動しますので、Ag2SはSを手放して、元のAgへ戻ります。こうして銀表面はAg2Sによるくすみが取れ、もとの奇麗な表面へ戻ります。
*上記の方法で銀のお手入れをなさる場合は、必ず換気をして下さい。

重曹は、弱アルカリですので、油脂を分解するような強アルカリほど洗浄力は強くありませんが、アルカリの持つ洗浄力と上記のような作用で汚れを落とします。また、個人差はあるものの素手で扱うと皮膚に刺激を受ける場合もございますので、ゴム手袋をしてご使用ください。

■重曹と髪の関係について■
まず、化粧品の分野では犬のドライシャンプーに使われています。犬・猫用は、厚生労働省の薬事法基準に触れないため、何でもありの世界なのです。実験即製品になっています。問題生じれば、製造を止める。このような作り方は人向けの製品には出来ません。

実際に人が使用するとなると、幾つかの問題点が予想されます。例えば、重曹自体に消臭力が強く、配合した香料の匂いを変えてしまうとか、個人差によって、皮膚障害を起こすことも考えられます。

浴用材にこの重曹を使うケースがありますが、重曹泉と言って、沸騰させると溶けている炭酸ガスが放出されてアルカリ性を示します。種々のナトリウム塩を含み、石鹸の効きがよい、乳化現象により皮膚の表面を柔らくし、脂肪、分泌物を洗い流す。入浴後、肌がつるつるする等の効果があります。但し、これは温泉での話。実際の浴用材は、重曹だけでなく、別途乳化剤を配合させます。

実際の温泉でも、重曹によって皮膚からの水分の発散が盛んになり、湯冷めしやすいので、「冷えの湯」ともいわれています。つまり、長時間この物質が付着したままでいると、皮膚や髪に残すべき水分を奪ってしまうことが考えられます。

さて、レンジの油やこびりつき等の硬い汚れを溶かすために使われているものが髪に有用かのお尋ねですが、毛髪タンパク質はデリケートです。そもそも髪の汚れはレンジの汚れと異なり、予洗(お湯洗い)で90%の汚れが除去され、僅かに残った汚れをシャンプーによって洗い落とす程度なのですから、何もそこまで拘り(こだわり)を延長しなくても、と言うのが私の意見です。

純石鹸を使われるような方なら、あまりコンディションを気にされないと思います。重曹シャンプーが出来るとすれば、それらクラスとの比較商品となるでしょう。 (また、私が関係しないところの商品に重曹を使ったドライシャンプーならある、と言うことを付け加えさせて頂きます。 )

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