なぜ液体はドロドロ・サラサラしているのですか?

初めましてこんにちは。ふっと思った疑問なんですが液体はなぜドロドロしていたり、サラサラしていたりするのでしょうか? つまらない質問かもしれないけどお願いします。

ご回答

サラサラとかネバネバとかいった性質を表す物性を粘性と言います。
 
容器に入れた液体を撹拌して流動させた後、そのまま放っておくと、液体内部の摩擦抵抗によって流動が減衰し、やがて停止します。このような抵抗の原因となるものが粘性で、サラサラなものでは弱く、ネバネバなものほど強いと言えます。このとき、撹拌によって与えられた運動エネルギーは、この摩擦による粘性発熱により熱エネルギーに変わります。
 
流れによって速度を与えられた液体分子は、内部摩擦により、もとの静止状態に戻ります。巨視的には液体が静止している状態でも、微視的には液体分子は熱運動(ブラウン運動)によって、揺らいでいるので、液体分子が静止してしまうのではなく、分子の速度が平均化されると言うのが正確です。
 
それでは、この摩擦抵抗すなわち、粘性がどのようにして発生しているかを簡単に説明しましょう。
 
液体の場合は、気体に比べて分子の間隔が小さく、分子間の相互作用が大きくなります。その結果、速く動いている分子とゆっくり動いている分子が近くを通ったときに分子間力でお互いを引き合って、速い分子の速度は遅く、遅い分子の速度は速くなり、速度が平均化され、やがて流動が止まります。したがって、分子間相互作用が強いものほど粘性が強いと言えます。また、温度が高くなると熱運動が大きくなるため、分子間力の影響が相対的に小さくなり、粘性は弱くなります。
   
一方、気体の場合には、分子間隔が大きく平均自由行程が長いため、分子間の相互作用は小さくなります。そして、分子間力によって速度の平均化が起きるのではなく、分子の衝突による運動量の交換によって速度の平均化が起こります。すなわち、流れの速いところにいた分子が流れの遅いところにいる分子に衝突すると、速い分子は減速し、遅い分子は加速されて、やがて分子の速度が平均化され、流動が停止します。したがって、気体分子の平均自由行程が長く、質量が大きいものほど粘性が高くなります。また、温度が高い方が分子運動が活発になって衝突が頻繁に起こるため、液体の場合とは逆に粘性は強くなります。
 
粘性の度合いを表す物性値を粘度(粘性係数)と言い、
(応力)=(粘度・粘性係数)×(変形速度)
のような形で定義されます。一般的によく用いられるのは、せん断変形(せん断流れ)に対する粘度(せん断粘度)です。せん断変形とは、例えば、水で手を洗うときに、こすり合わせた手の平の間の水が受けるような変形のことです。同じ速さ(変形速度)で手をこするために必要な力(応力)が大きいほど粘度が高いと言うわけです。粘性が抵抗として働いているというイメージが出来たでしょうか。ちなみに、棒状の物体を引っ張るような伸長変形に対して定義される粘度(伸長粘度)もあります。
 
これで、一応、粘性の発生のメカニズムの説明は出来たのですが、身の回りのネバネバ・トロトロ液体のなかには、少しややこしい話になるものがあります(サラサラ液体は一般的に性格がいい)。
 
流体内部の構造に関係して現れる粘性というものがあります。ここで言う”構造”とは、分子・原子サイズよりも大きな構造のことです。このような内部構造を持っている流体を複雑流体と呼んでいます。ここで、流体の内部構造に関係した粘性について少し紹介しておきます。
 
液体に微小な固体粒子を分散させたような系をサスペンション(懸濁液)と言います。例えば、ペンキや化粧品は溶媒に顔料(通常、平板・円板状の薄い粒子)を混ぜたものですし、繊維強化複合材料(FRP)に使われるファイバー・サスペンションは樹脂に繊維を懸濁させたものです。
 
剛体球粒子のサスペンションに対するアインシュタインの粘度式というものがあります。粒子の体積分率をφ、溶媒の粘度をηsとすると、溶液の粘度ηが

 
η= (1 + 5/2φ)ηs  

で表されるというものです。あまり高濃度でない場合には実験とよく一致することが報告されています。この式を見ると、剛体球粒子のサスペンションでは、溶媒からの粘度上昇が粒子の体積分率φで決まるということが分かります。混ぜられた粒子が多いほど、変形に対する抵抗力が大きくなるので粘性も大きくなるとなるというイメージです。
 
ちなみにこの式を提案した論文は1906年に出されたものですが、この前年は、アインシュタインが「光電効果の理論」、「ブラウン運動の理論」、「特殊相対性理論」に関する革命的な論文を発表し、アインシュタインの奇跡の年とも言われています。それから100周年にあたる2005年は、世界物理年(World Year of Physics)とされています。

少し脱線してしまいました。本線に戻りましょう。
  
粒子が球形でない場合は、話が複雑になります。粒子がラグビーボールのような回転楕円体だったり、細長い棒状だったらどうなるでしょうか。
 
流れが弱いときには、ブラウン運動によって粒子はいろいろな方向を向こうとしますが、ブラウン運動に打ち勝つほどの変形速度が生じると、粒子は流れの方向に配向します。楕円体だと長軸、棒だと棒の長手方向が流れの方向に傾きます。粒子が流れの方向に向きをそろえると、流れに対する抵抗が小さくなり見かけ上、粘度が低下したようになります。内部構造によって粘度が変化する一例です。また、容易に想像できると思いますが、変形速度によって粒子の向きのそろい具合が変わるので、変形のさせ方によって粘度も変わってきます。
 
もうひとつの例を紹介しましょう。
 
高分子流体はプラスチック成形品や人工繊維の材料で、ふだんの生活の中でもよく目にするものです。また、唾液やクモの糸、魚の体表面の粘液といった生物由来の流体も高分子流体です。高分子溶液の場合には、溶質である高分子は分子量が大きく比較的長い分子になります。様々な形態の高分子がありますが、ここでは簡単に鎖状の長い分子を思い浮かべて下さい。分子は平衡状態では鎖が丸まったり、折りたたまれたような形態をとっていますが、流動させると、それが流れ方向に 引き伸ばされます。その結果、流れに対する抵抗が小さくなり、見かけ上粘度が小さい流体のように振舞います。また、高濃度の溶液あるいは融液の場合には、高分子が絡み合ってネットワーク構造を作ります。このネットワークが流れによって、変形したり破壊されたりすることで見かけの粘度が変化します。一般に高分子流体の場合にも粘度が変形速度に依存します。
 
このように変形速度によって粘度が変化するような流体を非ニュートン流体と言います。説明が逆になりましたが、変形速度によらず粘度が一定の流体をニュートン流体と呼び、一般に水やグリセリンなどの比較的低分子量の分子からなる液体や気体は、ニュートン流体になります。
  
私の研究では、このような内部構造を持つような流体(複雑流体)が示す変わった流動現象のメカニズムを、流れ中の流体内部構造の変化と関連付けて解明することを目的としています。また、複雑流体は様々な機能性を有し、それらが様々な工業製品に利用されています。複雑流体の示す機能性の発現は、流れ中の流体内部構造と大きく関係します。将来的には、欲しい機能を持たせるために必要な流れ中の内部構造の変化を、コンピュータシミュレーションなどで予測して、複雑流体のデザインが出来たら面白いなと考えています。

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