次亜塩素酸による消毒

私は食品会社に勤務する者です。次亜塩素酸ナトリウムによるライン殺菌は当社でも行っていますが、今回このサイトを訪れて、pHによって殺菌効果が全く違うことを初めて知りました。(参考ページ

しかし、次亜塩素酸ナトリウムに酸を入れると、塩素ガスが発生して大変危険だと思います。そこで、他社では一体どのような方法を用いているのでしょうか?(例えばpHを厳密にコントロールしているとか、どのような酸を使っているとか。)また、殺菌温度は何度ぐらいで一番効果が上がるのでしょうか?

ご回答

「塩素系洗剤」の主成分は、「次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)」です。この物質は、加水分解によって次亜塩素酸(HOCl)になります。

NaOCl + H2O ⇔ HOCl + Na+ + OH-

したがって、実際は、塩素系洗剤中の塩素はHOCl(次亜塩素酸)の形で存在しています。この物質は、非常に酸化力が強く、そのため、漂白・殺菌に威力を発揮します。

その次亜塩素酸が塩酸と混ざると、塩素ガス(Cl2)を発生します。ちなみに、塩酸は、トイレの洗浄剤等に使われています。

HOCl + HCl ⇔ H2O + Cl2↑

塩素ガスは、眼、皮膚を腐食させます。さらに、濃度が高いと死に至る危険性さえあります。ですから、これらの洗剤をご使用の際は、くれぐれもご注意下さい。

この次亜塩素酸は、塩酸以外の酸の存在下においても塩素ガスを発生します。例えば、酢酸(CH3COOH、食用酢の主成分)との反応は、

2HOCl + 2HAc ⇔ Cl2↑ + 2H2O + 2Ac-  (ここで、Ac-は酢酸イオンを示す。)

となると考えられます。

一般に、塩素の化学種(Cl2、HOCl、OCl-)の間には、

Cl2 + H2O ⇔ HCl + HOCl

HOCl ⇔ H+ + OCl-

という平衡が存在します。そのため、その存在比率は、pH、水温、共存物質によって変動しますが、特にpHに大きく支配されます。pHが低くなるほど、塩素ガス(Cl2)の存在比率が高くなり、pHが高くなるほど、OCl-の比率が増します。(pH5でのHOClの存在比率はほぼ100%ですが、pH2でHOClが約60%、Cl2が約40%、pH8でHOClとOCl-がともに約50%です)。

したがって、塩素系洗剤には塩酸のみならず、pHを低下させる働きのある「酸」であれば塩素ガスが発生すると言えます。

最後に次亜塩素酸イオン(OCl-)についてですが、OCl-はHOClと比較して酸化力は弱く、消毒効果は、HOClの約1/80であるとされています。前述したように、OCl-はpHが高くなるほど多く存在します。したがって、塩素系洗剤に逆にアルカリを加えた場合は、塩素ガスは発生しませんが、漂白・消毒効果が低下してしまうので、これについても注意が必要です。

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